剣岳の八ツ峰は、前穂北尾根などと逆順で、下から順に1〜8峰が並んでいる(このほかにもピークがある)。このうち、6峰は複数の岩峰で、下からA〜Eフェースとなる。筆者は、Cフェース(ピッチが長いので人気らしい)を計画していたが、予期せずにAフェースへ転進。一応は、長次郎谷側のリッジを外れないように意識していたが、事前情報に乏しいまま、適当に登れるところを登る結果となる。下山後にトポを見ると、ほぼ「魚津高ルート」らしいが、正確には同定できない。
取り付きは、Aフェースの岩小屋の5mほど上(5・6のコル側)。スリングでピトンを連結して開始点とする(残置スリングなし)。1P目は、凹角を直上。左でカンテに出てレッジ(30m)。2P目は、このレッジの左1mから、少し直上の後、リッジ通し。このピッチは非常に長く(40〜45m)、露出感があるが、やさしい。これで実質的に終了。3P目は、緩いスラブを10mほどで、ロープなしでも可(一応は使った)。1P目の終了点以降は、残置スリングのある確保支点になっている。
なお、1P目は、先行パーティーと同じ。ここでの登り返しの間に、先行パーティーに引き離されるが、2P目は、後続パーティー(学生4人のうち2人・・他の2人は別ルート)が同じルートを登ってきたので、(他人まかせの判断だが)大きくルートを外したことはないと思う(たぶん魚津高ルート)。しかし、3P目、手持ちのトポでは、魚津高ルートが「40m」となって、長さが合わない(実際には10mほど)。中大ルートに出たのかも知れないが、よくわからない(このピッチでは、後続の挙動不明・・後続を待たずに先に降りてしまった・・しかし、どんなルートをとっても、2P目終了点から山頂まで「40m」はないはず・・謎だ)。
ランニング用の残置ピトンは非常に多いが、ベタというより、利きが甘いので近くに打ち直したもの。強度には注意しなければならないが、全部を使う必要はなく、適当に間引いても問題ない。実際に、筆者も各ピッチ5箇所程度しかランニングを取っていない。
山頂からは、稜線越しに6峰ピークの方向には進めず、5・6のコルに向かって懸垂するしかない。山頂の一段下、ハイマツのブッシュに支点があって、緩いスラブ(下降路のほうが緩傾斜という珍しい設定だが、このスラブは、泥付き・草付きなので、登りに向かない)を降りる。ロープ1本では届かないので(約40m)、途中の支点で架けかえる。5・6のコルの少し下(長次郎谷側)に降り、ガレを歩いて下る。なお、6峰ピークへは、5・6のコルから、三の窓谷側に踏み跡があって、Aフェースの頭を経由せずに行ける。