大樺沢二俣から左俣をたどり、八本歯のコルに向かう。二俣からしばらく進むと(雪渓歩きで0.5hぐらい)、顕著な沢が右から出会うが、これがバットレス沢(上部はaガリーとbガリー)。その先、すぐにc沢(上部はcガリー)とd沢(上部はdガリー)が出会う。下部岩壁へのアクセスは、これらの沢の間の小尾根に踏み跡がある。また、雪渓が中途半端でない時期なら、沢そのものを登ることもできそう。
筆者らは、c沢右岸の踏み跡をたどる。樹林を抜けると、正面に十字クラック。その左(「左」・「右」は、すべて岩壁に向かって)にdガリー大滝,、右にcガリー大滝が同定できる。いずれも、水流のほとんどないナメ滝状。bガリー大滝は、cガリー右側の岩陰で見えないが、ずっと右にaガリー(「滝」でなくただのガレ場)。急傾斜の雪渓やガレ場のトラバースを覚悟すれば、バットレス沢でもd沢でも、そして、その中間の小尾根の踏み跡でも、どこから入っても、aガリーからdガリーまでの任意の場所にアクセスできそう。(第五尾根支稜はdガリー大滝のすぐ左・・dガリーからアクセスできる)。
下部岩壁では、右寄りにあるbガリー大滝を登路としているパーティーが多数派らしい(筆者らが行ったときも、過半のパーティーがbガリー大滝に向かっていた)。しかし、bガリー大滝は、奥まった場所にあり、その取り付き位置も高い。c沢右岸からは、大きく右にトラバースしつつ、急雪面を相当に(ロープ1本以上)登らなければならない。また、bガリー大滝を登ると、上部でcガリーを横断しなければならないが、ここに雪が残っているとメンドウ(実際には無雪だった)。筆者らは、アイゼンを持たなかったので、下部岩壁最左端の第五尾根支稜を登路に選ぶ。
dガリー大滝の左側から取り付き、容易な岩稜を2ピッチ登り(2P目は潅木で支点)、大滝のすぐ上のガレ場を右にトラバースする(トラバース終了点はピラミッドフェースのルート)。この先、ダケカンバ樹林の踏み跡をたどる(ロープ不要)。この樹林は、第四尾根下部のピラミッドフェースの頭の直下にあたるので、まっすぐ登るのが近そうだが、踏み跡はほぼ水平にcガリーのガレ場まで続いている。しかし、cガリーを右に越えると、第二尾根に向かうことになる(第四尾根はcガリーの左)。cガリーを越える踏み跡は、bガリー大滝から第四尾根方向に向かうものだろう。cガリーの手前で折り返して、樹林を少し戻り気味に登ると第四尾根取り付きに続くリッジに出る。リッジには少し難しい場所もある。
下部岩壁やその上の緩傾斜帯では、尾根の形状が明確でなく、どこが目的の「尾根」なのか、容易にはわからない。しかし、ガリーは明確で、顕著なナメ滝(水はほとんどない)やガレ場になっている。そのため、dガリーとcガリー(いずれも下部岩壁の上で顕著なガレ場)を同定できていれば、第四尾根(dガリーとcガリーの間の尾根)を見失う心配はない。これらのガリーの間を適当に登っていると、やがてヤセ尾根になり、自然に第四尾根主稜の取付きテラスにたどりつく。