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甲斐駒黒戸尾根(2008.11.23)

 毎年恒例の黒戸尾根日帰りハイキング。今年は、ちょっと時期が遅くなったので、アイゼン・ピッケルつき。

 11/23(日) 5:00、ヘッデンをつけて竹宇駒ケ岳神社の駐車場発。笹ノ平の少し下でヘッデン不要に。この付近から雪が少しあるが、樹林帯なのでアイゼン不要。9:30過ぎに七丈小屋。9合目で稜線に出るとで雪が固く岩に張り付いている。アイゼン装着・・しかし、ネジがバラけて、愛用していたアイゼン(CharletのMacalu)がお亡くなりになる(片足アイゼンとピッケルだけでも行動に支障ない)。11:30頃に山頂。山頂付近で、七丈小屋の管理人さんが、何か作業(稜線でハイマツに付けられたマーキングの点検か補修らしい)しておられるのに会っただけ。山頂も無人。
 すぐに下山開始。ここからが長い。アイゼン装着用の硬い冬靴。下り斜面はつま先が痛いので、ゆっくり下る。16:00頃になると、樹林帯は薄暗くなり、気分も沈む。駒ケ岳神社の手前で単独の男性に追いつく。「坊主の滝はまだ(未凍結)だが、それ以外はほぼ登れる」とのこと。黄蓮谷のアイスの偵察を終えて下山中らしい。何とかヘッデン不要の時刻に下山。(単独、アイゼン・ピッケル)



釜の沢から甲武信岳(2008.10.25-10.26)

 今年2度目の釜の沢。鶏冠谷を考えていたが、同行者S氏に配慮して(「トサカ?」、「何それ?」という状態だった)、知名度優先。前日まで雨だったので、水量が心配だが・・

 10/25(土) 6:00、西沢渓谷駐車場から林道歩き。途中で、ヌク沢の水量を観察すると、やや増水しているが、問題なさそう。二俣で遊歩道を離れ、東沢を渡渉し、対岸(左岸、鶏冠尾根末端側)に渡る。
 ここで鶏冠谷(と鶏冠尾根登山道入口)を見送り、東沢の登山道へ。途中でトラバース道が崩れているので、わずか3メートルほどだったが、念のためハーネス装着。懸垂で河原に。山ノ神と名づけられた祠で登山道は終了。沢タビに履きかえる(8:30)。「東のナメ沢」、「西のナメ沢」を見送り、やがて、左岸から釜の沢が流れ込んでくる。ここで釜の沢に(10:10)。
 すぐに、「魚止めの滝」。平水時なら左の壁から簡単に登れるが、増水していて、壁に取り付けない・・というのは大げさな表現だが、壁の直下に、ヒザの深さの流れがある。幅1m足らずだが、この日は、ちょっと流れが速い。壁の取り付きに足を置くことができず、最初の一手が出せない。壁にジャンプして取り付くが、やや難しい。少し登ってからS氏を確保。
 その後は、高巻き道の泥斜面が水を含んで崩れやすいだけ。リスキーだが難しくはない。確保と短い懸垂下降を交えながら、淡々と前進(この沢、正面突破しなければならない滝がなく、「核心」は高巻き)。両門の滝では、よりポピュラーな東俣へ。
 午後の早い時刻に着くかと思ったが、S氏がバテている。仕方ないので、ゆっくりと歩き、16:50頃、小屋着。テントを持参していたが、すでに薄暮。体を乾かすのも難しいので、小屋に素泊まりとする。ほぼ満杯の小屋だが、ストーブにあたれるだけでも快適。この日の宿泊客で、沢からのアプローチは、筆者らのパーティーだけらしい(沢でも他のパーティーに会わなかった)。

 10/26(日) 下山は鶏冠尾根。明るくなってから出発(6:00)、木賊山の山頂付近で縦走路を離れて樹林帯に。枝にテープを巻きつけた小さなマーキングが点々と施された細い踏み跡。暗くなるとルートを見つけるのが困難だろうが、この時刻なら問題ない。
 やがて展望の開けたピークに出る(8:40)。これが地形図の「鶏冠山」。ここからは、マーキングもずっと派手になる。しばらく行くと稜線の鞍部に「第三岩峰迂回路」と書かれた看板。その指す先は、鶏冠谷側の樹林の中に下る暗い道。これを無視して稜線越しに進むと(マーキングあり)、「鶏冠山 山梨百名山」の山頂標のあるピーク(9:15)。これが「第三岩峰」らしい(地形図の「鶏冠山」ではないが、こちらのほうが切り立っていて、立派に見える)。推測するに、下からの登山者は、この岩峰を直登せずに、「迂回路」を通って、稜線上部の鞍部に出て、そこから稜線越しに戻りつつ、岩峰のピークを踏むのだろう。筆者らは迂回路には入らず、ピークのちょっと先から、懸垂下降(約20m・・途中に大きなテラスがあるがほぼ垂直)。降り立った場所は、例の「迂回路」の反対側の入り口。そのまま稜線を次のピークへと下る。しばらく岩のやせ尾根を歩いた後、短い懸垂下降で樹林帯に。この少し下で、登ってくる数人と行き違う。時刻から推測すると、第三岩峰の日帰り往復らしい。
 鶏冠尾根はこの下にも岩峰があるが、ルートは稜線を離れて、鶏冠谷側に大きく下り始める(10:30)。急降下だが、歩きやすい登山道。約1時間で、東沢の河原(前日の渡渉点)に出る(11:30)。これを渡り返して、西沢渓谷の遊歩道に合流すると、多数のハイカー。紅葉の最盛期。天候もこの時刻に回復しているので、人口密度が高いのは仕方ない。軽装のハイカーに追い越されながら、ゆっくりと駐車場に戻る(12:15)。(2人、テント装備・・使わなかった、ロープ9mmx50m他)



北穂東稜・前穂北尾根(2008.10.18-10.19)

 前週(北鎌尾根ハイキング)に少し雪。時期から考えて、秋シーズンのラストかも知れないと思うと、ちょっと気合。この週は2日とも快晴。

 10/18(土 5:00、ヘッデンをつけて上高地発。10:30頃に涸沢着。テント設置。このままテントで休んでいてもよいが、時間はたっぷりある。ハーネスとロープ(8mmの補助ロープだが短い懸垂には足りる)だけをザックに入れて、北穂に向けて出発(11:30)。軽くなったザックで快調に歩ける。
 無雪期の北穂東稜は初めての経験。目測を誤って、過早に東稜に向かったらしく、変な場所で稜線に出てしまった。北穂沢側から見上げると快適そうだが、歩ける場所は、反対側の北穂池寄りの斜面。1hあまりも、崩れやすい砕石とハイマツのヤブに苦しむ。
 やがて、2メートルほどの岩峰を登り、岩稜歩きが始まる。この付近は南西斜面なので、雪は残っていない。岩稜はすぐに終了し、短い懸垂でコルに。残雪期ならコルから北穂沢に下りられるが、この時期は山頂まで行くしかなさそう。そのまま稜線を登る。ここまで誰にも会わない。すぐに、槍からの縦走路に合流して、14:00頃に北穂小屋。時刻が早いのか、ここも人口密度は高くない。小屋で飲料を買う(水筒も持ってこなかった)。南稜の登山道を通って下山。16:00涸沢のテントに戻る。

 10/19(日) 未明から人の歩く気配。これに追い立てられるように急いでテントを撤収して出発(6:00)。しかし、ゾロゾロと歩いていた人たちは、涸沢ヒュッテのヘリポート付近で三脚を立てて動かなくなった(こんな時刻に人騒がせな・・)。結局、5・6のコルへ向かったのは筆者だけ。少し登ると、ガレ斜面に薄く雪が残っているが、軟雪なので、夏靴でも問題なく歩ける。
 慶応尾根上半から北尾根を登ったことがあるので、5・6のコルからは既知の場所。稜線では、涸沢側の斜面に雪が残り、奥又側は無雪。ここまで誰にも会わなかったが、4峰で3人パーティーを見つける。3・4のコルで追いついて話しかけると、4峰で時間がかかりビバークしたとのこと。あいさつして先行させてもらう。
 既知ルートでもあるので、問題がなければロープを出さないつもり。1P目は、奥又側に大きくトラバースするのを避け(ザレ斜面は容易だがリスキー)、残置に導かれて途中から直上。上で岩を抱えるようなへつりになるが、乾いているので難しくない。緩い斜面を少し登って終了点。2P目は、チムニーの中を2段ほど登ってから、左にチムニーを出て、少し登ると終了点。3P目は、胸の高さのテーブル状の岩(チムニーの天井石)に這い上がり、少し水平に歩いてから、凹角を数メートル。その後は歩いて3峰の頂上に出られる。2峰から5mほどの懸垂下降。すぐに前穂山頂(10:00前)。3峰の取り付きからここまで15分。アタリマエだが、(懸垂以外に)ロープを使わなければ、強烈に速い。(1P・・と書いているが、ロープを出していないので、実際には確保支点を横目で見ているだけで、ノータイムで通過。なお、3峰は、大きなテラスを挟んで、5m足らずのギャップが何段か重なっているだけ。ロープを使うとすれば1P目のトラバースだろうが、技術的には易しい。2P目以降は、落ちても、一段下のテラスで止まるはず。)
 ハーネスをザックに押し込んで、ゆっくりと重太郎新道(前月の明神岳と同じ下山ルート・・飽きたが、この時期にギャップだらけの奥明神沢を下りる気にならない)を下山。(単独、テント装備、ロープ8mmx30m他)



槍ヶ岳北鎌尾根(2008.10.11-10.13)

 秋シーズンの3連休。北鎌尾根ハイキングとした。例年のコースだが、ちょっと時期が遅いので、冠雪しないことを祈るしかない(降っても最初は軟雪だから何とかなるが・・)。

 10/11(土) 天候は晴れ。5:00、上高地発。少しでも楽をしたいので、明神橋を渡り、右岸の車道を進む。さらに、反則技を承知で、新村橋を見送り、河原の工事用車道をたどる。アップダウンがなく非常に快適。奥又白谷出会付近で、隠れた橋があって、左岸に渡り、そのまま河原の平坦地を進んで、横尾のキャンプサイト裏まで行ける・・7:30横尾、9:00槍沢ロッジ、10:00水俣乗越(大曲の指導標には「みなまた」とあるが、「水俣川(みずまたがわ)」の源流だから、「みずまたのっこし」のはず)。
 少し休憩して天上沢へ下降。天上沢の下部は、傾斜が緩いので、どこでもテントを使えるが、昨年の台風(2007年9号)で細砂が流失していて、寝床になる平坦地が少ない。ここでビバークするなら、涸沢キャンプ場の不良サイトのように、ゴツゴツした石の上で寝る覚悟がいる。時刻も早いので(まだ午前中)、そのまま前進。北鎌沢に突入。槍沢ロッジから先、ここまで他のパーティーに会わない。
 北鎌沢の途中で休んでいると、天上沢の下から見上げている人が小さく見える。また、天上沢の北鎌沢出会いには、先刻通り過ぎたときにはなかったテントも。さすがに3連休の人気ルート。何パーティーか入っているのは間違いない。
 14:00頃に北鎌沢のコル着。先客も予期していたが無人。端に寄せてテントを張ったが、その後、夕刻までに到着するパーティーはなかった。静かな夜を過ごせる。

 10/12(日) 6:00、明るくなってから出発。独標では、千丈沢側の巻き道に入らず、直登を試みる。巻き道の入り口、リングボルトとフィックスロープのある岩の裏側、天上沢を見下ろすバンドが直登ルートの取り付き。バンドの上がややかぶっている。クラックに左手を入れてハンドジャム。失敗したら天上沢の底まで落ちそうだが、ちょっと体を引き上げると、すぐ上のダケカンバをつかむことができる。あとは簡単な木登り。痩せたリッジの通過もあるが、登るほどに傾斜がゆるみ、やがて独標山頂(9:00頃か)。視界良好で、大槍、小槍、孫槍・・がよく見える。
 後続パーティーは北鎌沢の下なので、稜線は無人と思ったが、独標の山頂付近で3人パーティーに会う。独標山頂でテントとのこと。独標から次のピークへのルートをさがしているらしく、頂稜の千丈沢側で動かない。道迷いに付き合う気もないので(ルートファインディングのお楽しみを妨げてはいけない)、頂稜を離れ、巻き道の終了点(チムニーの上)を目標に、3ピッチほど懸垂で下りる。(傾斜が緩いので、ルンゼ状斜面を歩いて下りられるが、ザレで落石が避けられない。リブのハイマツ帯をつないで、ロープで下りる方がベター。)巻き道に出会ってから、道なりに登り返すと、独標先のピークに出る。
 この先、稜線を歩くだけ(北鎌平付近も巻かずにほぼ稜線)。2hほどで大槍に取り付く。振り返ると、ずっと下のピークに後続パーティー。山頂直下は、山頂の北側を半周する広いバンドがあって、その上が2mほどのギャップになっている。ギャップを越えるには、天上沢側のチムニーがポピュラーだが、違うルートを試みたくなる。バンドを千丈沢側に回りこむと(歩いて行ける)、槍ヶ岳山荘が見えるあたりから、階段登りで山頂に(13:00)。山頂は10人ほどでそんなに混雑していない。
 当日中の強行下山も不可能ではないが、ちょっと疲れたので、殺生ヒュッテ泊(テントで食生活が貧しかった)。夕方までに後続の1パーティーも到着して宿泊。

 10/13(月) 6:00出発で下山(降雪が・・)。(単独、テント装備、ロープ8mmx30m他)



鋸岳から甲斐駒(2008.9.27-9.28)

 今年2度目の鋸岳。今回は、大ギャップ(第三高点と第二高点の間、深さ40mほどのギャップ)を通過する冬ルートの偵察。角兵衛沢から稜線に出て、鋸岳山頂(第一高点)から稜線越しに甲斐駒山頂まで。下山は北沢峠から戸台川経由(バスは使わない)を計画。懸垂の長さがわからないので、2人パーティーとして、念のためロープを2本持ち込む。

 9/27(土) 晴天。4:30、戸台河原の駐車場をスタートし、戸台川の広い河原を歩く。約2hで角兵衛沢の出会い。角兵衛沢は、全長にわたって水流がないガレ沢。これを稜線まで詰める。しばらくは、沢の左岸、その後は右岸側の樹林に登山道が続いている。約1.5hで樹高が低くなり、やがて沢の本流に飛び出す。幅50mほどの広大なガレ。左岸に「大岩」と呼ばれる高さ100mほどの大岩壁(第一高点から落ちる稜線の末端で、人工で登れるらしいが、見るからにボロボロ・・)がある。大岩下の岩小屋で給水休憩(8:30頃)のあと、ガレをさらに登って、角兵衛沢のコルで稜線に(10:00)。第一高点側に少し登って大休止。ついでにハーネス装着。
 角兵衛沢のコルから15分で第一高点。さらに5分下ると小ギャップ。7mほどの垂直の壁が切れ落ちている。クサリもあるが自分のロープで懸垂。小ギャップ底から反対側の壁を登り返すと、「鹿窓」といわれる風穴がある。
 夏道は、鹿窓の風穴をくぐって、甲州側から戸台川方向に抜け、風穴直下のルンゼ(「鹿窓ルンゼ」と通称)を下って、大ギャップ底から落ちるガレ沢に出る。しかし、今回は積雪期ルートの偵察。稜線から直接(鹿窓ルンゼを経由せずに)、大ギャップ底に下りたい。鹿窓をくぐらず、その右脇から頂稜(第三高点)に上がる。そのまま進むと、やがてダケカンバの根元にスリングを巻いた残置支点がある。何箇所かあるが、甲州寄りの支点は位置が悪く、これを使うと、大ギャップ底をはずれ、主稜線の甲州側、登り返しに苦労しそうな急斜面に降りてしまう。できるだけ戸台川寄りの支点を選んで、支点のスリングを打ち足して、ロープ2本を連結して下降。下降しながら壁を蹴ると、岩がはがれ、小石がバラバラと落ちる嫌な場所。途中で空中懸垂に。
 大ギャップ底は、人ひとりがやっと立てるほどの狭い場所。ロープを回収しながら長さを測ると、この支点なら、50m1本で足りたらしい。
 大ギャップ底からは、ガレ沢を戸台川方向に少し下って(それでも夏道のガレ沢横断点よりずっと上)、第二高点側の樹林帯に入る。このガレ沢が急で、石が不安定に積み重なっているに過ぎない。軽く足を置くだけで激しい落石。わずか50mほどだが時間がかかる。樹林帯では、下からの夏道と合流し、第二高点へ(13:00)。少し休憩してから、中の川乗越に下ってテント(13:30)。朝からここまで誰にも会わない。

 9/28(土) 5:30、テントを撤収し、甲斐駒山頂に向けて樹林帯のハイキング。途中で、偶然にN夫妻と会う(数年ぶり)。六合石室泊で筆者らと逆方向の縦走らしい。他に逆方向の縦走が数パーティー。寄り道(日向八丁尾根を派生する三ツ頭でザックを置いて烏帽子まで偵察)しながらも、10:00に甲斐駒山頂。双児山経由で北沢峠へ(12:00頃)。長衛小屋でビールを買って休憩してから、林道を歩いて下山。大平から林道を離れ戸台川へ。角兵衛沢の出会いでは、この日の朝にすれ違った3人パーティーが休憩中。筆者らと逆方向の縦走を終え、角兵衛沢を下りてきたところらしい(ここからも長い)。15:00頃に戸台河原の駐車場に戻る。(2人、テント装備、ロープ9mmx50m2本他)



明神岳東稜(2008.9.20-9.21)

 この週末(9/20-)、某パーティーは「錫杖前衛壁」らしいが、これは筆者のような初心者が楽しめるコースでない(お呼びじゃないはず)。上高地の明神岳は、前月(8.23-8.24)にチャレンジしたが、終始雨天で、モチベーションが上がらず、結局、ひょうたん池キャンプに終わっていた。単独で明神岳東稜のリベンジを計画する。

 9/20(土)5:00、上高地スタート。この時刻では降雨はないが、天候不良(予報では雨・・)。明神から下宮川谷へ。少し登って、左岸の枝沢に。一応は沢筋(涸れたガレ)だが、狭い沢なので両岸から迫るブッシュがうるさい。やがて、開けた地形に出るとすぐに宮川のコル。この先は、広いガレ斜面(たぶんナダレ頻発地で木が生えない)。9:00過ぎにひょうたん池(長七のコル)着。
 ここからは初めてのルート。緩急はあるが単調な登り。やや痩せた尾根で、歩ける方向は限られる。完全にガスに巻かれ、視界は100mもない状態でも、迷う心配はない(踏み跡も随所に)。ひょうたん池から2h足らず、少し下り始めたと思ったら、ラクダのコルらしいテント適地。これを通り過ぎて、宮川谷寄り(左側)をトラバース気味に登ると、ガスの中から突然に岩場が出現(11:00前)。
 登路はこの岩の中央の凹角。ガスで下が見えないが、落ちると又白谷の底まで転落しそう。岩の取り付きにピトンが固め打ちしてあるので、ロープ下端を固定して、ロープを入れたサブザックだけを背負って登り始める(ソロなので、ハーネスにつけた芯抜きスリングのマッシャーで長さを調整しつつ、自分でロープを繰り出す)。ロープの流れを考えなくてよいので、ヌンチャク無用。プロテクションは、50cmほどの間隔で連打されているピトンにカラビナをかけるだけ。凹角に沿って登り、左手を伸ばせば、下からは見えないが、大きなガバ。これで体を支えつつ、登山靴のフリクションでテラスに上がって終了。そこから数メートル登ると(歩ける)、確保支点がある。ここまで、ロープ半分ほどのピッチ。確保支点にロープを固定。
 こんなことをしながら、岩場で遊んでいると、大粒の雨。大急ぎで懸垂しながらランニングを回収。ザックを担いで登り返す(マッシャーは片手で扱えず、急いでいるときにあせる・・アセンダーを持ってくるべきだった)。ロープをたたんで、そのまま山頂(明神岳主峰)に駆け上がる。この先は、以前に主稜を縦走しているので既知。山頂は、大きなテントは無理だが、2人用なら2張りぐらい使える。テントを広げ、ザックを投げ込む(たぶん正午過ぎ)。
 日帰りも考えていたが、雨がやむ気配もない。あまり濡れないうちにテントに避難できたので、テントの中は結構快適。山頂キャンプを決め込む。ほとんど無風。雨のおかげで、ガスが飛んで少し視界がある。タイクツだが、周囲はもちろん無人(明神から先、誰にも会わない)。ラジオを遠慮なく鳴らせる。

 9/21(日)ガスはあるが、大粒の雨はやんで霧雨。岩が濡れているので、2峰を登る気にもなれず、7:00頃、テントをたたんで、前穂に向けて出発(懸垂下降1回)。踏み跡を見失ったが、稜線の岳沢側を適当に歩くと、突然に「紀美子平・前穂高岳」の指導標。前穂山頂に着く(時刻不明)。どうせ視界もないので、そのまま下山(重太郎新道)。午前中に上高地に着く。(単独、テント装備、ロープ9mmx50m他)



剣岳源治郎尾根(2008.9.13-9.14)

 三連休で、ガイドパーティーから北岳バットレスのお誘いがあったが、かねて剣を計画。そうすると、どうしても行きたくなる。単独になってしまったが、この計画を優先。テント装備(稜線ビバークも考えたので、食料もあまり減らせない)とロープが重荷だが、何とかなるだろう。

 9/13(土)始発のアルペンルートで扇沢から室堂へ。剣沢でテント。夕方から雨。

 9/14(日)3:00起床。前夜の雨はやんで、曇り(視界はある)。3:30出発。縦走の可能性を考えて、テントも全部持つ(濡れて重い)。真っ暗な剣沢を下る。しばらくは剣沢右岸の夏道だが、すぐに雪渓が続くようになったので、アイゼンを装着して雪渓に下りる。明るくなる頃に、尾根末端の平蔵谷寄りから取り付く。
 草付き斜面の踏み跡を100mほど登ると、2mほどの小さな岩。ここでボルダリングを強いられる。指紋をすり減らすような細かいホールドに苦戦したが、何とか乗り越える(この後にも一回・・これらが核心だった)。その後、樹林はうるさいが、よく踏まれた登山道。1峰の直下あたりで樹林を抜け、快適な稜線ハイキングとなる。
 2峰の懸垂下降点は、2パーティーほどの順番待ちで、15分ほど休憩。(6mmロープを持ち込んでいるパーティーもいた。確保無用で懸垂だけとしても、細いロープでの長い懸垂は、伸縮すると恐ろしそう。ほとんど伸びない材質かな?)
 直前のパーティーがロープを回収したので、筆者のロープをセット。事前の情報では、50m1本で足りるとのこと。万一の登り返しに備えて、芯抜きスリングを用意して下降開始。下降しながら観察すると、コルから数メートル上のテラスまで、余裕で届いている(テラスまでなら、50mロープで少し余るぐらい)。テラスからコルまでは、テラスの右端(長次郎谷寄り)から、歩いて降りられる。
 その後は、歩くだけで山頂(13:30頃)。せっかくの三連休なので、もう一日使って、小窓雪渓まで歩くことを考えていたが、北方稜線からぞろぞろ上がってくるガイドパーティーらしい団体の毒気にあてられて(落石だらけの場所で、ロープを引きずった団体さんと会いたくない)、元気を失い(水の在庫も乏しかった)、そのまま別山尾根下山を決める。途中、剣山荘から剣御前への道を間違え、1hほどロスしたが、何とか最終のアルペンルートに間に合う。連休が1日余った。(単独、テント装備、ロープ9mmx50m他、アイゼン)