東京手形交換所規則施行細則77条(不渡事由等)
東京手形交換所
不渡事由は、大きく分けて「0号不渡事由(不渡届提出不要で不渡処分の対象外)」、「第1号不渡事由(異議申立ができない)」および「第2号不渡事由(異議申立ができる)」に分けられる。以下は、不渡事由を規定した東京手形交換所規則細則77条。全国の手形交換所でおおむね同じ規則が採用されている。なお、ここでの「手形」は、約束手形・為替手形のほか、小切手を含む。
規則第63条第1項に規定する不渡事由および不渡届の取扱いは、つぎによるものとする。
(1) 0号不渡事由(不渡届提出不要)
適法な呈示でない等を事由とするつぎに掲げる不渡事由であり、この場合、不渡届の提出は不要である。
A. 手形法・小切手法等による事由
形式不備(振出日および受取人の記載のないものを除く*1。)、裏書不備、引受なし、呈示期間経過後(手形に限る。)、呈示期間経過後かつ支払委託の取消*2(小切手に限る。)、期日未到来、除権判決
1* 振出日および受取人は、手形や記名式小切手の手形要件・小切手要件であるが、これを記載しない手形・小切手が流通している現状を追認して、当座勘定規定でそれを支払う旨を定めている。
2* 当座小切手の「事故届」や当座勘定の解約は「支払委託の取消」になる。この場合、呈示期間経過後の小切手は0号不渡として不渡処分なしで不渡返還される。呈示期間内なら盗難など第2号不渡事由(事故届の場合。ただし、「資金不足」と競合することがある)または取引なしの第1号不渡事由(当座勘定の解約)に該当する。
B. 破産法等による事由
破産法(第155条第1項)、会社更生法(第39条)、民事再生法(第30条第1項、第54条、第79条)、商法(第386条第1項、第454条第1項)による財産保全処分中*3、民事再生法による包括的禁止命令(第27条)、破産宣告*4(破産法第16条)、会社更生手続開始決定(会社更生法第112条)、民事再生手続開始決定(民事再生法第85条第1項)、会社整理開始決定(商法第381条)、清算手続による弁済禁止(商法第423条第1項*5)、会社特別清算開始(商法第438条)、支払禁止の仮処分決定*6(手形面の最終権利者が仮処分決定主文中における債務者または裁判所執行官の場合)
3* 債務者に対して発令される。銀行には送達されないので、発令を銀行に知らせる必要がある。
4* 破産債権は、破産手続によらなければ行使できないので、手形は破産者の当座勘定で決済することができない。この場合の不渡を0号不渡事由とする趣旨。
5* 有限会社の解散に準用されている(有限会社法75条1項)。なお、解散および清算人就任の登記を行った会社(株式会社)の手形が交換呈示され、取引なしで不渡返還された実例がある。本号による不渡届不提出を確実にするためには、債権申出期間の公告(商421)などを行ない、弁済禁止(商423)の証明を確実にする必要がある。
6* 「手形の呈示禁止」などの仮処分で、手形所持人に対して発令される。この者からの取立てに限り、不渡処分の対象とならない0号不渡事由になる。この場合、手形が譲渡され、譲受人から取立てられれば、0号不渡による処理は行われないので注意を要する。
C. 案内未着等による事由
案内未着*7、依頼返却*8、該当店舗なし、レート相違・換算相違、振出人等の死亡、再交換禁止(手形交換所規則施行細則22条本文*9)
7* 銀行が振出した他行や他店を支払人とする送金小切手に限る。
8* 手形所持人の申出に基づく持出銀行からの「依頼」によって手形を返還する取扱い。手形所持人が手形の取立てを撤回する形式を取るため、0号不渡として不渡処分は行われない。依頼返却の場合でも、支払呈示としては有効で、原則として裏書人などに対する遡求権を失わないとするのが判例。
9* 「施行細則22条 いったん交換に付して不渡返還された手形は、再度交換に付すことはできない。ただし、あらかじめ支払銀行の承認を得たものまたは、「案内未着」、「形式不備」等再度の持出を予期できる返還事由のものについては、このかぎりでない。」
D. その他による事由
上記A、B、Cの各不渡事由に準ずる事由>*10
10* Aに準ずる事由としては「二重特定線引違反」などが考えられる。
(2) 第1号不渡事由
つぎの不渡事由であり、この場合、第1号不渡届の提出を必要とする。ただし、取引停止処分中の者にかかる不渡(取引なし)については不渡届の提出を要しない。
資金不足(手形が呈示されたときにおいて当座勘定取引はあるがその支払資金が不足する場合)
取引なし*11(手形が呈示されたときにおいて当座勘定取引のない場合)
11* 現実には、「取引なし(取引き停止処分済)」などのかっこ書きが付されるか、「取引なしかつ用紙交付先相違」(虚無人名義の手形の場合)などの第2号不渡事由と競合することが多い。
(3) 第2号不渡事由
0号不渡事由および第1号不渡事由以外のすべての不渡事由であって例示するとつぎのとおりであり、この場合、第2号不渡届の提出を必要とする。
契約不履行、詐欺、紛失、印鑑(署名鑑)相違、偽造、変造、取締役会承認等不存在、金額欄記載方法相違(金額欄にアラビア数字をチェック・ライター以外のもので記入した場合等)、約定用紙相違(銀行所定の用紙以外を使用した場合)
不渡事由が重複する場合はつぎによる。
(1) 0号不渡事由と第1号不渡事由または第2号不渡事由とが重複する場合は、0号不渡事由が優先し、不渡届の提出を要しない。
(2) 第1号不渡事由と第2号不渡事由とが重複する場合は、第1号不渡事由が優先し、第1号不渡届による。ただし、第1号不渡事由と偽造または変造とが重複する場合は、第2号不渡届による。
不渡処分の概要
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