2011以降へ



前穂北尾根(2010.10.16)

 9月末から天候も安定せず、やや不完全燃焼。単独で試みた八ヶ岳の大同心南稜は、最上部のドームで高度感に負けて、このピッチを巻いてしまう(9.26)。S氏同伴の前穂北尾根は、少し強い風のため、8峰から6峰までを歩いただけで5・6のコルから撤退(10.3-4)。登山届を出して2人パーティーで予定していた谷川岳は、雨のため妙義の星穴岳ハイキングに変更(10.10)・・と、敗退ばかりが続く。
 安易なコースで気分転換と考えて、この週は単独で前穂北尾根(涸沢経由で5・6のコルから上半)。2年前(2008.10.18-10.19)と同じだが、今回は前穂のみとして日帰りを想定。難しい場所はないので、ロープは懸垂のみ。仮に、先行パーティーがあっても、ロープを使っていなければ、支点の順番待ちがないので、追い越しもできる。しかし、長丁場を歩き続ける体力の問題のほか、道迷いなどで時間をとられると日帰りができなくなるので、一応はテント(と水3l)を持参。そして、ザックは未整理のまま(なぜか50mロープ・・懸垂だけなら20mで足りる・・と大量のカラビナ・・タダの荷物)、中途半端な装備で重い。

 10/16(土) 5:00頃、上高地スタート。横尾を経由し、9:50涸沢。少し早い昼食(売店で買い食い)のあと、給水して5・6のコルへ。途中、単独行者(たぶん奥又から)が5・6のコルから涸沢に下るのを見ただけ。11:30に5・6のコル着。コルには赤い帽子の落し物。涸沢を見下ろすと、テントが10張り程度。午後になると、もっと増えるはずだが、涸沢もそんなに混雑していないらしい(涸沢の標高では、紅葉はほぼ終了か)。
 北尾根の稜線は、この時期なのに、冠雪の形跡がなく、まったくの夏山状態だが、日陰には霜柱。岩をつかみながらのハイキングなので、気温の下がる早朝より、この時刻の方が快適に違いない(岩陰の軟雪は問題にならないが、霜はすべるので遠慮したい)。5・6のコルでビバークの誘惑もあったが(2週間前、S氏同行のときは、北尾根下半をトレースし、ここで沈没)、そのまま前進することに決め、5峰に取り付く。こんな遅い時刻に北尾根に取り付く人は少ないらしい。この先、前穂山頂まで無人。
 4峰の奥又側で少しメンドウなラインに迷い込み、細かいホールドに苦戦して、30分ほどのロス。3峰でも、20kgを越える重荷で、少し厳しい場所もあるが、岩が乾いていて、コンディションは問題ない。ほぼ順調に通過。2峰の短い懸垂を経て(ロープはここだけ)、14:20頃に前穂山頂に着く。この日のうちに下山できることが確実になったので、少し休憩して、水2lを捨てる。
 この先は、重太郎新道を下山するだけ。16:10岳沢小屋、薄暗くなった17:40頃に上高地に着く。終日快晴だが、少し強い風。(単独、テント装備・・使わなかった、ロープ9mmx50m他)



槍ヶ岳北鎌尾根と小槍(2010.9.18-9.20)

 3連休。今回は2人パーティーになったが、新手のコースにチャレンジする余裕がなく(某ルートをねらっているが、下調べ未了)、1年前(2009.9.26-28)と同じルート(前回は単独)。同行者(北鎌尾根は数年前に同行、小槍は初見)のいるときに、確実に抜けられるとわかっている既知ルートは、精神的に安易である。

 9/18(土) 5:00頃、上高地スタート。8:20横尾、10:40水俣乗越、12:00頃天上沢から北鎌沢へ・・と順調に進み、14:30頃に北鎌沢のコル(3人パーティーがテントを張っている)。筆者らはもう少し前進し、天狗の腰掛下にテント(16:00前)。晴れ。

 9/19(日) 4:30起床、テントを撤収し5:00スタート。独標の直登ルートを取付きから観察するが、今回は軟弱モードなので、巻き道で巻き終わってから独標ピークに。この間、後続パーティーに追い越されるが、その後は特に問題なく、11:00満員御礼の槍ヶ岳山頂着。大渋滞の登山道を避けて、適当なルート(下りルートのずっと左を東鎌尾根に向かってまっすぐに・・)で降りて、槍ヶ岳山荘のヘリポート付近にザックを投げ出す。サブザックにフラットソールとロープだけを入れ、小槍の取付き(曾孫槍とのコル)を目指す。近づくと、男女5人の先行パーティーがコルの下で準備中。
 小槍をあきらめて、曾孫槍から大槍へのルートでも目指そうかとも考えるが、北鎌尾根終了後の余興なので、カムやハンマーなどの装備がない。まだ早い時刻なので、待つ時間はある。それに、一応はマルチピッチ(ソロなら、1ピッチで登ってしまうが、通常は20mと15mほどの2ピッチ)。ソロのように、ロープをフィックスするわけでもないので、先行パーティーのラストが登ったあとを追って登れる。待ち時間も長くないだろう。何よりも、他パーティーの登りを間近に見る機会(ここで他パーティーを見るのは初めて)。順番待ちも楽しそう。
 アプローチシューズで登っていたリードの男性は、右側のカンテラインを目指したらしいが、筆者が過去に登ったラインを解説してしまったので、チムニーのラインに・・ルートファインディングのお楽しみを妨げたとしたら申し訳ない(岩が薄いので、カンテラインは露出感が強烈過ぎると思うが・・)。5人パーティーはロープ2本で1-2-2のシステム。中間者は8の字で固定しているらしく、「1P目は20mで届くか?」と質問されたが、これはわからない(1P目終了点の少し上で、50mロープのセンターマークだったので、25mなら確実だが)。ロープの長さを考えてか、後続パーティー(筆者ら)のために支点を占拠しない配慮か、通常の支点より少し先に、自ら支点を作っておられた。
 筆者が小槍山頂に着くと(筆者らはツルベで、2P目は筆者がフォロー・・これで小槍山頂は2パーティー計7人)、先行パーティーは懸垂の準備中。筆者らは支点から少し離れた山頂の西側(広い)で待機。先行パーティーが降りてから、筆者らも懸垂下降。槍ヶ岳山荘の前に戻ると、先行パーティーから紅茶をご馳走になる。ストーブなしの北鎌テント生活だったので、温かい飲物は美味。ババ平でテントという彼らと別れて、殺生ヒュッテへ。快晴。

 9/20(月) 未明から雨だが、この日は下山するだけ。4:00殺生スタート。9:30上高地着。到着後、雨がやむ。(2人、テント装備、ロープ9mmx50m他)



笛吹川鶏冠谷左俣(2010.9.4)

 9月になっても猛暑。ある程度の標高があって(丹沢は暑い)、シャワークライムのできる夏向きの沢と考えて、笛吹川の鶏冠谷とする(単独)。

 9/4(土) 5:20頃、西沢渓谷の駐車場をスタート。遊歩道を外れ、東沢を渡渉する。水量は過去に経験がないほど少ない。鶏冠尾根末端から鶏冠谷に入る(6:30)。ここからは初見。両岸に崖が迫る暗い沢相で、針葉樹に覆われているが、猛暑の日よけには好適。登れる滝が多く(ゴルジュ状の地形なので、高巻きは難しく、二俣まで高巻きは1箇所のみ)、滝つぼはヒザ上までつかり、水流に沿って直登の繰り返し。やがて、逆くの字滝が見える(文字どおり、逆「く」の字に屈曲した滝)。屈曲点から上の右壁にピトンが連打され、スダレのようにスリングが垂れているが、この日は水量も少ないので、お助けヒモ無用(このスリングにつかまって体を引き上げると、水流から外れたヌルヌルの壁に導かれてしまう)。
 しばらく登ると二俣(9:00過ぎ)。右俣のほうが水量が多い(3:1ぐらい)。どちらに進むか迷って大休止。結局、傾斜をつけて流れ込んでいる左俣を選ぶ(マーキングあり)。ゴルジュから解放され、明るい沢相になるが、直射日光を浴びて暑い(快晴)。二俣の上は、しばらく右からの高巻き。水流に戻って、ナメ床と小さな滝を越えていると、水涸れ(11:00頃)。針葉樹林のごく細い踏み跡(シカの獣道?)をしばらく登った後、シャクナゲとアカマツが出てくると(ヤブこぎ)、鶏冠尾根の稜線、2177mピーク付近に飛び出す(水涸れ後、1h以上)。駐車場からここまで、誰にも会わない。
 この場所からは、鶏冠尾根を下降するのが最速だが、7月(2010.7.24)にも通っている。ここまでの登りで、ヤブに食傷気味だったので、木賊山に登り返して(ついでに甲武信小屋に立ち寄ってビール・・)、戸渡尾根(ほぼ10年ぶり)を下る(14:30前)。近丸新道では、ヌク沢の仮設橋が流されていたが、問題なく渡渉。一般路はさすがに歩きやすく、2hほどで戸渡尾根を下って、西沢渓谷の遊歩道に(16:30前)。
 鶏冠尾根と戸渡尾根の間の狭い範囲を流域とする沢なので、(釜の沢など、この付近の沢と比べて)水量も少ない。特別に難しい場所はないが(「逆くの字滝」が唯一、固有名詞らしい名前のついた滝だが、これが最難というわけでもない)、傾斜の強い滝の直登が続くので、緊張が緩むこともなく、予想外に楽しめる。 (単独、テント装備・・使わなかった、ロープ9mmx50m他)



明神岳主稜(2010.8.21-8.22)

 猛暑でモチベーションが・・だが、雨の心配はなさそう。しばらく同行のなかったS氏に声をかけると、OKとのこと。同氏とは、何度か槍ヶ岳の北鎌尾根などを歩いているが、今年で80歳近いご年齢(78歳?)を考えると、長い行程を1泊では余裕がないので、上高地の明神岳とする。上高地から穂高の稜線(やや主脈から外れているが)への最短コース。筆者は、ルートや季節を変え、何度か経験がある(なぜか単独ばかり)。今回は、S氏(明神岳は初見らしい)同行なので、その表玄関、5峰西南尾根からの主稜の単純縦走とする。筆者単独なら厳冬期以外は日帰りコースだが、標高差があって、体力的にはやや厳しい。今回は稜線でのテント泊を想定し、装備(と水)を用意する。

 8/21(土) 5:00頃、上高地スタート。岳沢道の7番コーナーから5峰の西南尾根に。樹林帯のバカ登りだが、針葉樹の尾根地形なので、風も通り、それほど暑くない。何度か休憩し、9:00前にヤセ尾根を通過し、森林限界。1hほどで5峰山頂に着く(快晴)。
 あとは、稜線を歩くだけ。4峰も忠実に山頂を踏むが、3峰は岳沢側を適当に巻く。すぐに2峰のピーク。5峰側からの縦走なら懸垂下降が安全(登りラインをクライムダウンできるが、段差が大きく、ややリスキーで、同行者のいるときに試すべき芸ではない)。懸垂支点から下が見えないので(剣の源治郎2峰と似た地形)、初めてのときは、ロープが下まで届いているか不安だったが、実際には50mロープ1本で問題ない(中段のテラスまで20m)。S氏の下降器をセットし、筆者が先に降りる。もう1ピッチ、短い懸垂下降で2峰先のコル。主峰山頂で小休止(12:00過ぎ)。テント適地(筆者にとってはおなじみの場所)だが、時刻も早いので、そのまま前進(この先も短い懸垂下降1回)。
 奥明神沢を下れば、残雪期なら1hほどで岳沢に着く。しかし、今回は安全を優先して、前穂山頂に登り返して、重太郎新道を下ることに。歩度がやや落ちているが、14:30頃前穂。そのまま、岳沢まで下る。16:20、岳沢小屋着。結局、稜線でテントを使うことなく(節水モードの不快なビバークを回避)、岳沢小屋も混雑していないので、小屋泊(食生活がよくなる)。

 8/22(日) 上高地まで歩くだけ。時間が余ったので、岳沢道の入り口でザックを放り出し、明神池周辺まで寄り道。(2人、テント装備・・使わなかった、ロープ9mmx50m他)



ジャンダルム飛騨尾根(2010.8.7-8.8)

 穂高のジャンダルムから、飛騨側に伸びる尾根(C尾根)。積雪期向きのルートで、夏にはブッシュを避けるため、主稜線から下降して取り付くのが通例らしい(・・というのは言い訳で、白出沢からの取り付きが厳しく、F尾根下部で敗退した経験がある)。今回は通例どおり、稜線からの下降でアプローチ、T3付近から単独で偵察(上部は初見)。

 8/7(土) 5:10頃、上高地スタート。6:40に岳沢(岳沢ヒュッテは経営者交替で、岳沢小屋と改名して営業中)。岳沢からジャンダルムへの最短路はコブ尾根だが、取り付きのコブ沢は沢幅いっぱいに雪渓が残っている。急な雪渓を上部まで行って、シュルントが開いて岩に飛び移れないと、撤退しかなくなる。コブ尾根をあきらめて、天狗沢の一般路を登る。9:20、天狗のコル着。
 天狗のコルから奥穂高方向に縦走路を進む。コブ尾根の頭に向けて、ザレ斜面の長い登り。数パーティーの縦走者とすれ違う。コブ尾根の頭を越えると、目の前にジャンダルム。大休止してハーネス装着。コブ尾根の頭とジャンダルムの間のガレ沢(β沢)を、飛騨方向に下降(10:30頃)。
 雪渓が消えて1ヶ月もたたないはず。ガレ沢は非常に歩きにくい。岩石ナダレを起こすほどの斜度でもないが、踏んだ砂利がズルズルと動く。慎重に足を進めるしかない。「15分ほど」との話もあったが、実際には1h近くかけて、ようやく涸れ滝まで下り、T3の高さに。ここから斜面をトラバースし、目的のジャンダルム飛騨尾根に(12:00)。
 飛騨尾根は、傾斜がせいぜい40度の緩いスラブ。アイゼンで登る積雪期(緩斜面なので着雪するはず)には、フリクションが効かないので難しそう。しかし、この時期(もちろん無雪)には、靴底のフリクションだけで快適に登れる。不安を感じるような傾斜でもなく、アプローチのトラバースとT2の岩峰下でロープを出しただけ。一気にジャンダルムの山頂まで登る。そのまま反対側に懸垂で降りて(奥穂側からの直登ルートらしく支点がある)、縦走路に出る(14:00前)。あとは、白出のコルまで歩くだけ。数パーティーを追い抜いて、14:20に穂高岳山荘着。小屋のテラスは混雑しているが、テントはまだ10張りぐらいしかない。終日晴れ。

 8/8(日) 下降は涸沢経由か、重太郎新道か・・と考えるが、やはり天狗沢(登りと同じルート)が早そう。4:00頃起床。奥穂への登路には、早立ちの縦走者かご来光目的の山頂往復か、ライトが点々と。テントをたたみ、4:30過ぎに出発(曇り)。ジャンダルムを越え(奥穂側から直登・・前日の懸垂ラインだが、簡単だった)、天狗のコルから岳沢に下る。9:30頃、上高地着。横尾ベースで屏風岩を登ったという3人パーティーとタクシーに相乗り。(単独、テント装備、ロープ9mmx50m他)



笛吹川ヌク沢左俣(2010.7.24)

 奥秩父のヌク沢。軽い日帰りコース(のはず)で、登り行程の大半は水に不自由しない。猛暑の季節向きと思って決める。前週の北岳バットレスと同じ2人パーティー(2人とも初見のコース)。

 7/24(土) 4:30頃、西沢渓谷の駐車場から林道を歩き始める。近丸新道の登山口をやり過ごして、ヌク沢橋から堰堤を1個越えて遡行開始。沢タビに履き替え・・などを含め、ここまで0.5h程度。ヌク沢下部は小滝の連続。水量が多く、やや迫力のある滝もある。しばらくすると、巨大な堰堤が正面に。その手前が近丸新道の横断点。堰堤を高巻きしてから、小休止(7:00頃)。その先で、同様の堰堤が4個、連続して現れる(遡行開始点から数えて計6個)。後から遡行図を確認すると、最後の堰堤の直前が二俣らしい(堰堤の高巻きに気をとられ、気づかなかった)。最後の堰堤から1hで大滝の下段(100m)。水流の左側を登る。その上は、大滝中段(80m)。「核心」とされるが、階段状なので、難しくない。水流の右側を登る。大滝上段(80m)は、左側の草付から。
 大滝の迫力は想像以上。落差も幅もあるので、樹林に妨げられず展望が効く。特に、中段は幅40mほどある岩壁状で、その落ち口に立つと、空中にせり出した舞台のようにも感じられる。観光地では、この規模の滝を水流に触れる位置で間近に見られるはずもないので、非常に印象的。一見の価値がある。
 大滝の上はナメ滝が続く。フリクションの効く花崗岩質。水量も減るので、のんびりと歩ける。左右に崩壊地。その先で水流がブッシュに覆われだす。少し進むと水涸れ。適当に登ると、倒木地帯(シラビソの倒木や枯死木と、その下で育っている幼木の混合・・たぶん縞枯れ現象による枯木帯)と樹林(シラビソとシャクナゲ)を越え、稜線の縦走路に出る(11:20)。木賊山を迂回する縦走路に沿って、甲武信小屋に向かう。駐車場から、ここまで、他のパーティーを見ない。小屋でも、まだ時刻が早いのか、客がいない。小屋でカップラーメンを買って10分ほど休憩し、12:00下山開始(甲武信山頂は省略する)。
 下降路は鶏冠尾根。2年ほど前(2008.10.25-10.26)の釜の沢の下降などで、使ったことがある。木賊山の山頂標から縦走路を離れ踏み跡に(季節柄、ブッシュは激しいが、踏み跡はおおむね明瞭)。だらだらと鶏冠尾根を下り、第三岩峰(「山梨百名山」の山頂標のあるピーク)から懸垂。下りながら観察すると、直登も容易そう(ただしNP)。第二岩峰・第一岩峰を経由して、予想より時間がかかり(戸渡尾根なら3h足らず)、6h近くもかけて、東沢の鶏冠谷出会いへ。ハーネスを収納し、東沢を渡渉。林道を歩いて、駐車場に戻る。(2人、ロープ9mmx50m他)



北岳バットレス第四尾根(2010.7.17-7.19)

 前週の小同心クラックに続いて、2人パーティーが組めたので、四尾根主稜とする(ソロでは時間がかかるので、混雑必至の人気ルートは困難)。筆者にとっては初見。同行者は過去にガイドパーティーに参加した経験があるが、完全にガイドのお客様モードで、取り付きへのルートも記憶にないらしい。

 7/17(土) 5:10のバスで芦安から広河原へ。6:30頃、白根御池を目指して歩き始める。8:30過ぎに到着。小屋でテント受付をすると、「ヘリが来るので、テントを張るのは待て」とのこと。しかし、初見のルートなので、すぐにでも取り付きの確認に行きたい。テントの場所取りだけをして、空身で偵察に出発。
 残雪が多く、二俣から雪渓歩き。c沢で大樺沢の雪渓を離れ、c沢右岸の踏み跡を登る。やがて下部岩壁が迫ってくるが、その手前は急な雪面。正面にはcガリーとdガリーの大滝。5人ほどのパーティーがロープを出して、bガリーを目指して雪面を登っている。筆者はdガリー大滝下を目指すが、雪渓と岩の間が深いギャップ(シュルント)で、取り付けそうもない。しかし、第五尾根末端なら、雪渓から岩に飛び移れると見当をつけ、偵察を終了。弱雨の中、急いで白根御池に戻り、テントを張る(13:00頃)。テントサイトには20張り以上。隣のテントは中央稜を目指すパーティー(取り付き偵察の際にも会う)。

 7/18(日) 満天の星の中、3:00スタート。先行パーティーのライトが見える。1.5hほどで下部岩壁。前日の偵察どおり、第五尾根の末端側から回り込み、第五尾根支稜を登る。dガリー大滝も2パーティーほどが登っている。少し登ると第四尾根末端のテラス(6:30頃)。ツルベなので、ロープをさばく必要がなく、速い。すぐに若い男性2人の先行パーティーに追いつく。(-->アプローチ
 第四尾根取り付きのクラックは、筆者のリード。フットジャムがよく効いて問題ない。その先、3ピッチは容易。筆者が奇数ピッチのリードにあたったらしく、5P目、「核心」のマッチ箱下もリード(右のスラブに逃げる)。ここまで順調。しかし、マッチ箱ピークの2箇所の支点は、それぞれ先行バーティーが占有。仕方ないので、その手前、不安定なリッジに腰をかけながら待機。この先、マッチ箱からの懸垂、懸垂で降りた場所、・・で全部順番待ち。懸垂の前後で、ロープを解いて、結び直して・・で時間がかかるほか、dガリー奥壁のツメを枯れ木テラスに向かうパーティーや後続パーティーを追い越してきたソロクライマーも合流し、大混雑。すぐ上の支点が空くごとに、使っていた支点を後続パーティーに明け渡し、わずかに前進・・・の繰り返し。後続パーティー(宇都宮の山岳会らしい)のリーダーと雑談しながら待つ。13:00過ぎに終了点。1h近く大休止し、行動食で昼食。山頂、肩の小屋、草すべり経由で、白根御池のテントに戻る(16:30頃)。終日晴れ。

 7/19(月) 4;00起床、テントを撤収し、5;00スタートで下山。6:30前に広河原着。
 四尾根主稜は、他の主要ルートを見渡す位置にあり、筆者のような未経験者にとって、位置関係把握に必須だが、混雑が難点。連休でない週末なら、少しマシかもしれない。(2人、テント装備、アイスバイル、ロープ9mmx50m他)



小同心クラック(2010.7.11)

 この日、予報では天候は下り坂。しかし、昼頃まで雨が降らないとのこと。梅雨期には貴重な半日なので、富士山に登った翌日だが、2人パーティーで八ヶ岳、横岳西壁の小同心クラックでロープワークの練習とする。1年ほど前(2009.8.22-23)に単独で登っているので、筆者にとっては既知のルート。

 7/11(日) 4:00過ぎに美濃戸スタート。柳川北沢から赤岳鉱泉を経由し、大同心稜から小同心正面へ。草付きテラスで準備し、8:00頃、筆者のリードで取り付く。天候は高曇りだが、ごく弱い雨で、パラパラと雨粒が落ちてくる。岩がぬれる前に終りたい。ランニング用のピンがほとんどなく、スリングを岩角に巻きつけなければならない。時間がかかるので、最小限に(各ピッチ1箇所程度)。単独のときは気づかなかったが(ソロは、ロープを流さず、手元で繰り出す)、ロープの流れがよくない。手がかりの多い初心者向き岩場なので、岩の凹凸が多く、ロープが引っかかって、すぐに流れ悪くなるらしい(ランニングはほとんどないが、ロープは屈曲している)。メンドウなので、ロープ半分以下でピッチを切ると、5〜6ピッチになる(それでも、単独より速い)。10:00前に横岳(奥の院)の頂上。
 ロープをたたんで下山開始。大同心稜の下降ルート(大同心と小同心の間)が早いが、縦走者もたくさんいる前で、立入禁止ラインを越えて、花の最盛期のコマクサ斜面に踏み込むのもためらわれる。ときどき降る弱雨の中、硫黄岳の山頂に登り返し、赤岳鉱泉を経由して、駐車場にもどる(12:30)。
 やや急ぎ気味。そして、ツルベのつもりだったが、なぜか全ピッチを筆者がリードすることになって、ビレーなどは、偏った練習しかできなかった(たとえば筆者は終始フォローをビレーしただけ)。しかし、誰もいない本チャンの岩場(本来は冬ルート)。ピトン打ちなど、小川山などのポピュラーなゲレンデでは、ちょっと遠慮せざるを得ない練習もできて、非常に便宜である。(2人、ロープ9mmx50m他)



西面から富士山(2010.7.10)

 梅雨の合間の好天に富士山西面の偵察。どこからでも登れそうな山なので、変なルートで登ること自体に価値があるわけでもないが、往年の登山道(お中道、主杖流し、・・)はどうなっているのか? 西面や北西面はどんな状況か?・・など、大衆化した山らしい好奇心も尽きず、半年前(2010.1.30)と前月(2010.6.12、吉田口馬返しからの日帰り)に続いて、本年3度目の富士山。今回は、お中道を、富士宮口登山道以西、剣が峰大沢までたどる(ついでに山頂へ)。

 7/10(土) 4:30頃、富士宮口新五合目スタート。人口密度の高い富士宮口の登山道を六合目(小屋のある新六合ではなく、元六合目の小屋跡)まで登る。ここで登山道を離れ、西方向に進むと、すぐにブル道。ブル道を100mほどたどり、これが折り返す先で、そのまま西に進むと、小さなマーキング。お中道らしい。この先、マーキングは点々と。ほとんど水平で歩きやすい。次々に涸れ沢を横断。沢床に名称が書かれている。消えかかったものもあるが、「表大沢」、「ハコアラ沢」、「主杖」などは判読できる。その先はダケカンバ林(シカを何頭か見る)。樹林で踏み跡を見失うが、次の沢に出ると、少し上に渡渉点のマーキング。さらに西に進み。沢を2本ほど越えると、ついに剣が峰大沢。深い谷になっている。数百メートル下で砂防工事中らしく、資材を覆うブルーシートなども見える。そのあたりまで下れば、剣が峰大沢を越えられそうだが、工事現場に踏み込むのも気が進まない。大沢越えはオフシーズンまでお預けとし、山頂を目指すことに。道迷いもあって、ここまで3h以上。8:00前になっている。
 剣が峰大沢から少し戻った場所の沢(主杖から数えて3本ほど西側、剣が峰大沢からの戻り道にある最初の明瞭な沢・・たぶん不動沢)を登る。最初はナメ滝状(水流はない)で登りやすいが、ツメは砂礫斜面のアリ地獄状態。こうなると登れないので、沢を離れて小尾根の露岩に。ちょっとした岩登りもある(ボロボロで難しい)。木片やガラスなどの廃材が広範囲に散乱する斜面を越えると、剣が峰の山頂測候所の真裏に(お中道を離れ、登り始めてから3h弱)。何人かが測候所周辺で休憩中。
 あとは下山だけ。時計回りにお鉢を3/4周ほど周回し(剣が峰から銀明水)、御殿場口登山道から下山。宝永火口を経由して、富士宮口新五合目に戻る(新六合目で14:00頃)。
 お中道のマーキングは、砂礫斜面に転がる人頭大の石に、白や黄色のペンキで書かれているだけ。強風もある積雪地。数年で跡形もなく消えるはずだが、明瞭に残っている。ということは、ほとんど毎年、メンテナンスしているとしか考えられない(誰が何のために?)。また、涸れ沢の渡渉点は、100m以上離れた上下に複数個所マーキングされていることもある(お中道が上下に何本もあるのか?)ミステリーである。(単独、アイゼン・アイスバイル・・使わなかった)



稲子岳南壁左カンテ(2010.6.5)

 GWは、槍沢から水俣乗越への登りで、小規模な表層の直撃(前日、4/30にまとまった降雪)。膝下が埋まった程度で、実害はなかったが、そのまま撤退。精神的に疲れ、このシーズンお楽しみの雪渓歩きは全部パス。N氏に誘っていただいた燕から蝶の縦走(2010.5.15-16、雪渓なしの稜線歩きなのでOK)のほかは、すべて無雪ハイキングを決め込んでいると、前週(5/29)は2人パーティーで遊びに行ったゲレンデ(小川山のガマルート)でビレーヤーがぎっくり腰とか(どんな姿勢でビレーしたのか?)。気を取り直して、この週は単独で北八ヶ岳の稲子岳。支点状況が悪く、撤退したことのあるルート(上部は初見)。

 6/5(土) 4:30頃、稲子湯先のゲートからスタート。しらびそ小屋のイヌに吼えられながら取り付きに急ぐ。積雪地なので仕方ないが、一般路にマーキングが多すぎて、どれが取り付きへの入り口なのかわかりにくい。他と異質なビニールテープのマーキングが正解らしい。踏み跡は薄いが、適当に樹林帯を進めば、やがてガレ斜面に出て、南壁が見通せるようになる。
 25m〜30mが3ピッチ。その後、稜上を少し歩いてから、15mほどのピッチで終了。最初(ランニングを取る前の一手が核心)と3P目のチムニー状(ザックが大きいと身動きができない)で少し緊張するだけで、あとは問題ない。支点はおおむね残置を使えるが、最後のピッチの終了点は設置に失敗したらしいリングボルトが散乱しているだけ。フォローをビレーするだけなら、ロープを岩角に巻きつけるだけでもできそうだが、ソロはロープ下端の固定を外すために懸垂で降りなければならないので、確実な支点が必須。ナイフブレードを2枚打つ(回収済)。終了点から砂礫斜面を少し歩いて山頂。なぜか時間がかかり、正午頃になっている。しらびそ小屋から、ここまで誰にも会わない。山頂も無人で、完全に貸し切り状態。
 山頂から踏み跡にしたがって、中山峠の方向に下山。途中、崩壊地で踏み跡が途切れているが、適当に歩くと、すぐに中山峠からの登山道に合流。しらびそ小屋を経由して(往路と同じ)、駐車場に戻る。
 傾斜もなく、フリクションもよく効き、見た目は非常に容易。岩も固い。しかし、浮いている岩が多く、うっかりホールドにできない。といっても、慎重に登るだけで、実際にも易しい。山頂の砂礫はコマクサの群生地らしいが、この季節、葉も出ていない。(単独、テント装備・・使わなかった、ロープ9mmx50m他、アイスバイル・・ハンマー兼ピトン抜きに使っただけ)



白馬岳主稜(2010.4.24-4.25)

 雪面が核心になるルートは、ビレーヤーの体を支点としなければならない場所が多く、単独では少し難があるので、強引にN夫妻を誘う(初見)。アルミ建材でスノーバーを手製する(市販品は重すぎる)。

 4/24(土) 4:30集合。4:50、二股から歩き始める。晴れ間もあるが、午前中は少し雪が舞う(午後から翌日まで快晴)。白馬尻から主稜を見上げると、稜線に届こうとしている2人パーティー。8峰付近まで行っても、明瞭なトレースがなかったが(この週の降雨・降雪でトレースが消えたらしい)、やがて、この2人パーティーのトレース(主稜末端からでなく、少し先から登ったらしい)。その後、このパーティーに追いつく。
 先を譲っていただいたので、筆者らが先行。恐ろしげな新雪のナイフリッジだが、靴でさぐると古いトレースがわかる。見た目ほど難しくない。しばらく先の広い急雪面で、今度は、スノボを持った別の2人パーティーに追い抜かれる。この頃から、ビバーク適地を物色しながら前進。15:30過ぎに、たぶん4峰のやや上。少し広い雪稜なので、筆者がビバークを提案すると、筆者らが追い越した2人パーティーもストップ。共同で整地して、筆者らを含めて2パーティー計3張。先行して行ったスノボパーティーは、少し先のピーク(3峰付近)でビバークらしい(この日は計3パーティー)。
 テントに入る前から靴が凍結する寒さ。夜は放射冷却で強烈に冷え込むが(快晴)、N夫妻に提供いただいた焼酎が美味。

 4/25(日) スノボパーティーの前日のトレースが風で消えかかっている。筆者らが先行して出発。頂上直下の雪庇にはトンネルが掘られている。スノボパーティーが苦戦しているのが見える。
 広い2峰で準備して、頂上直下のピッチ。筆者のリードで取り付く(N氏に譲っていただいた)。1ピッチでは届かないので、25mほど登ったところで切る。スノーバーが効いて、支点ビレーが不安なくできる。といっても、急斜面の途中。3人全員が到着すると、立っている場所もないので、確保器をそのままにして、筆者は一段上で待機。その頃には、同じ場所でビバークした2人パーティーのほか、後続のパーティーも到着。その中には、知人のS夫妻も(手間取ってお待たせ、申し訳ない)。
 ビレーの準備ができたので、最後のピッチを登る。雪庇直下までは、特に問題ないが、スノボパーティーの苦戦を見ているので、雪庇のトンネル直前、念のためにスノーバーでランニングを取る。トンネルに入ろうとするが、これが小さくて、ザックがあたって進めない。不自由な腹ばい姿勢で、トンネルに体をねじ込もうとしているときに、不用意に足を動かしたらしく、アイゼンの爪が外れて墜落。10mほど落ちるが、スノーバーが効いて止まる(ビレー、ありがとうございました)。仕切りなおして再チャレンジ。ピッケルでトンネルの穴を少し広げ、やっと山頂に。すぐに支点を作るが、確保器を下の支点に置いてきている。ビエンテ(本来は荷揚げ用だが・・)をセットしてビレー。N氏らも到着。握手と記念撮影大会。山頂では西風で寒いので、白馬山荘前に移動する。
 あとは、大雪渓を下って、二股まで歩くだけ。下山後にS夫妻を交えて、夕食会・解散。お付き合いいただいて、そして、墜落を止めていただいて(そして晩酌用焼酎も)、本当にありがとうございました。(3人、テント装備、ロープ9mmx50m他、アイゼン・ピッケル・アイスバイル)



阿弥陀岳北稜(2010.4.10)

 八ヶ岳の阿弥陀岳北稜。以前にもトライしたが、ガスと降雪で取り付きがわからず・・など、先送りになっていた。シーズンも終わってしまうので、春のポカポカ陽気の中、単独で様子を見に行く(初見)。

 4/10(土) 美濃戸口から美濃戸まで完全に無雪なので、美濃戸まで乗り入れて駐車。5:30頃、出発。南沢の登山道下部は、融雪が再凍結した氷が随所にあって歩きにくいことこの上ない(これがこの日の核心かも)。
 行者小屋前でハーネスとアイゼンを装着して歩き始める(8:00)。初めてのコースだが、視界もよく、ルートを目で追うことができる。文三郎道を離れ、中岳沢を少し進み、北稜末端の尾根を回りこんだあたりで、ジャンクションピークに向かう(不明瞭な古いトレース)。
 「第一岩稜」は、右側のダケカンバつき雪面から登れる。雪がハゲたら面倒な草付き斜面かもしれないが(これが無雪期に登られない理由か?)、この時期はアイゼンで快適に・・というより、登路側からは岩が見えないので、下からルートを観察していなければ、これが「岩稜」と気づかないはず。すぐに傾斜の緩い5mほどの岩塊で、ここから「第二岩稜」。ロープを出すが、最初の一手が股関節の柔軟体操になるだけで、すぐに抜ける。そして、階段状の岩場(中間部は、傾斜が緩いので雪のついた斜面だが、上下一連の岩場で、ここまでが「第二岩稜」らしい)。その上は、雪のハゲかけたナイフリッジ。あとは、広い雪面を歩くだけ。11:00過ぎに阿弥陀岳山頂着。雪を飛ばす風もないので、山頂の指導標は、根元まで雪に埋まっている。
 ここまで誰にも会わなかったが(赤岳山荘で駐車料金を徴収に来たおばさんだけ)、山頂には南稜を抜けてきたという単独行の男性。美濃戸方面に下山したいらしいので、「舟山十字路までなら、私のクルマで」となって、中岳沢から一緒に下山。残雪期特有の粘着質の雪、表層雪崩の心配はなさそう。南稜の男性は、テント装備で20kgを超えるらしい。歩度が進まないが、筆者も急ぐ理由はない。15:00頃に美濃戸。歩き足りない・・(単独、ロープ9mmx50m他、アイゼン・ピッケル)



鋸岳(2010.3.20-3.21)

 前週は八ヶ岳(赤岳・横岳の稜線を歩いただけ)だったが、もう少し楽しめそうな甲斐駒稜線上の鋸岳。本年の1.23-24に敗退しているコース。今回はロープ1本に軽量化してリベンジ。無雪期には1年半前(2008.9.27-28)に偵察済。3/20夜は、低気圧が発達しながら日本海を通過するらしいが、昼間だけでも天候が崩れなければ何とかなる。

 3/20(土) 戸台河原の駐車場を4:30スタート。先行者1名のライトが見える。6:30頃、角兵衛沢の出会い。ここまで無雪。先行者は北沢峠方面に向かったらしく、この先、誰にも会わない。
 しばらく樹林帯の登り。10:00頃、大岩下の岩小屋。気温が高く、岩小屋のツララからは水滴も。ここから広いガレ沢を歩く。なだれ注意報が出ているが、沢筋では薄いカチカチの雪がマダラ状にあるだけ。12:00少し前、稜線(角兵衛沢のコル)着。ハーネスを装着。稜線の甲州側はたっぷり雪がついているが、信州側(戸台川方向)はアイゼンが効かないほど氷化した薄い雪。慎重に第一高点へ。わずかな登りだが、時間がかかる。12:50、第一高点着。
 小ギャップはロープを出して懸垂。反対側の壁を登り返して、リッジをまたぎ越す。その先、鹿窓までの夏道は、甲州側斜面をトラバースしているが(20mほど)、この斜面は深い雪に埋もれて、トレースのない雪壁。稜線越しも行けるがリスキーなので、慎重に雪壁をトラバース。鹿窓の右手から第三高点に登る。第三高点の頂稜は、甲州側が雪(50cmほどの雪庇)で、信州側がほとんど露出。すぐに大ギャップに向けて急な下り。ロープが1本しかないので、大ギャップ直上の支点まで行かなければならない(それ以外の支点、たとえば、第三高点からまっすぐ下ったところにある甲州側よりの支点だと、50m1本で届かない可能性がある)。大ギャップ底を見下ろす細かいバンドを慎重にアイゼンで通過。緊張で喉がからから。時間をかけて目的の支点に行き着く。1年半前に筆者が打ち足したスリングも健在。懸垂で大ギャップ底に降り立つ(16:30頃か・・時間がかかっている)。
 大ギャップ底からは、少し信州側に下り、第二高点への登り返し。深い雪の急斜面(トレースなし)。表面に乗っているのは吹き溜まりのサラサラ雪なので、ラッセルは問題ないが、「表層雪崩」が頭をかすめる。慎重に直登するしかない(トラバースは雪崩を惹き起こす)。第二高点を通過し、ちょっとした雪面を下って、18:00前に中の川乗越。甲斐駒側にあと1hも行けば、樹林帯でテントを使えるはずだが、ここまでで14h近い行動。これ以上の行動は無理と考え、ここでテント。
 この日の夜は、予報どおり強烈な風と横なぐりの雨。テントのポールが折れる。フライシートがまくれ上がると、テントの中は水びたし。ほとんど寝ずにテントの防戦。

 3/21(日) 朝になっても風は強い(雨は夜半から雪に変り、テント氷結)。テント撤収。テントの水を追い出して・・と時間がかかり、8:00頃に出発。この時刻なので、甲斐駒を考えずに、熊穴沢を下山。テープのマーキングは非常に多いが(20m間隔ぐらい)、ほとんど使われないルートで、踏まれていないので歩きにくい。約4hで戸台川に。川は増水して激流。飛び石では渡れない。右往左往して、何とかヒザ下の渡渉点を見つける。その後も何度か靴を濡らしながら、14:00頃に駐車場に戻る。
 前回の敗退、そして今回のリベンジだが、1日目の行程にやや無理。無雪期なら一瞬に通過できる場所でも、アイゼンで慎重に進むと時間がかかる。このコースに入るパーティーの多くが、大岩下の岩小屋を1泊目にしている理由が理解できる。(単独、テント装備、ロープ9mmx50m他、アイゼン・ピッケル)



御殿場口から富士山(2010.1.30)

 前週(1.23-24)は、鋸岳から甲斐駒を目指し、ロープ2本と冬山装備の重荷で疲労困憊。第一高点を踏んだときには15:00前。時間切れで角兵衛沢のコルまで戻ってテント。そのまま撤退・・と、筆者には文字どおり荷の重いコースだったので、今回はこのコース。

 1/30(土) 太郎坊のトンネル先の空地に駐車(周回道路から御殿場口新五合目への車道は閉鎖)、4:00頃スタート。車道を歩かず、樹林帯の踏み跡をたどると、20分ほどで新五合目の駐車場。無人(もちろん駐車車両もない)の駐車場に街路灯が空しく光っている。大石茶屋付近までは無雪だが、すぐに薄い雪(せいぜい数cmだが、パリパリにクラスト)が続くようになるので、アイゼンを装着する。少し登って、宝永山を見上げる場所で明るくなる。4人パーティーが先行しているのが見える。
 山頂部に少し雪煙が見える。御殿場口は南東斜面なので、季節風に対して常に風下だが、地形の変化があると突風。宝永山の標高を越えると、稜線を越えてきたやや強い風で、雪粒と火山灰が風に舞って顔に当たる。といっても、この日の風は強くない(せいぜい10m/s程度)。途中で、4人パーティーのうちの3人を追い越す(1人は30分ほど先行)。山頂直下は、雪がほとんど飛ばされ、夏道が出ている。長田尾根はほとんど露岩状態で、アイゼンのまま歩きたくないので、夏道を登る。
 11:30、山頂の一角、銀明水に到着。そのまま富士宮口山頂へ。浅間大社の奥宮は、南側だけを残し、他の三方向を囲む建物配置。吹き溜まりなので、雪は多いが、風除けには絶好。4人パーティは、ここをスコップで切り出している。テントを張るつもりかな。筆者はザックを放り出して剣が峰へ(やや強い風)。
 12:00、4人パーティーと別れて下山開始。往路を降りるだけだが、アイゼンでは「砂走り」とはいかない。4hもかけて、16:00前、新五合目駐車場に。さらに15分ほど歩いて終了。終日晴天だが、御殿場口側は風下なので、標高の低い場所に雲(部分的な雲海)が滞留、方向の定まらない風に流されながら、複雑な動きをしている。(単独、テント装備・・使わなかった、ロープ8mmx30m他・・使わなかった、アイゼン・ピッケル)



赤岳天狗尾根(2010.1.10-1.11)

 年末年始は、ハイキング(2009.12.27-28燕山荘、1.2-3赤岳・阿弥陀岳)・・ばかりだったが、成人の日を含む3連休後半は、冬型が緩むらしい。少し気合を入れて赤岳天狗尾根とする。半年前(2009.6.13、もちろん無雪)に偵察している。

 1/10(日) 5:05美し森駐車場発。川俣林道の途中でヘッデン不要に。林道には新しい轍もある(堰堤の工事現場に無人の重機)。沢に下りてからトレースが不明確になる。出会小屋に着いたのは8:00過ぎ。林道歩きは、1.5hほどだったかと思ってスタート時刻を決めたが、半年前の記憶はアテにならず、ここまで3hもかかっている。もっと早出すべきだったと後悔する。
 出会小屋は、扉のスキマからのぞくと、中にテントが1張り。小屋の扉は外から閉じられているので、住人は天狗尾根か権現のバリか・・。ここからトレースがあるので、ずっと楽に。トレースは赤岳沢を数分さかのぼったところから天狗尾根に取り付いている。クマザサの斜面なので、夏道のはずがないが、ヒザ下の雪で快適に登れる。すぐに尾根に乗る・・といっても、夏道より尾根の末端側から取り付いているので、先は長い。視界は悪いが(小雪)、風は強くなさそう。
 稜線下部で下山中の男女2人のパーティーに会うが(撤退か?)、その上もトレースは続いている。やがてカニのハサミ(左から)。30m岩壁では、別の男性2人のパーティーがロープを出している。大天狗下の岩峰でこのパーティーを抜くが、大天狗(もちろん右から巻く)では、安易に取り付いたラインで苦戦。2mほど下のレッジまで落ちる(ロープを引っ掛けてヘルメットのあご紐破損)。この間に男性2人のパーティーに再び抜かれ、「ロープを出しましょうか?」と声を掛けていただくが、このラインは傾斜が強くゴボウでも登れると思えない(甘かった)。ロープ提供は謝絶して自分のロープで懸垂。ラインを修正して登り直す。
 この先に難しい場所はない。すぐにキレットからの縦走路に(15:30)。しかし、日没まで1hなので、このまま真教寺尾根を下山すれば、樹林帯に入ったところで日没になる。樹間を縫うような細い道しかない。トレースが期待できないので、ヘッデンでは方向を見極めるのも難しいだろう。日帰りをあきらめて、天望荘宿泊か(営業中?)、行者でテントか(装備はある)。先行していた男性2人のパーティーは、キレット方向に下山らしい。これと行き違って、山頂を目指す。16:00頃天望荘着(営業していた)。

 1/11(月) 清里方向に下山したいので、県界尾根(たどったことがない)とする。頂上小屋の裏手から北東方向の稜線を少し下る。この付近は、クサリが一部露出しているので、ルートはわかる。しかし、目指す県界尾根は北東でなく、まっすぐ東に伸びている。夏道はどこかでトラバースしているはず。少し降りてから、腰までの雪をラッセルしつつ、方向を修正。県界尾根の樹林帯に入ったところでアイゼンを外しワカンに。
 樹林帯では、雪の薄い場所で踏み跡が判別できる程度で、ひざ上までのラッセルが続く。12:00頃(ここまで4hも)、小天狗(天狗尾根の大小の天狗とは関係ない)のピーク。その下で、ルートは大門川(県界尾根と真教寺尾根を分ける沢)に下っている。地形図にはない道だが、ここから明瞭なトレース。駐車場は真教寺尾根直下なので、この方向に降りられるならありがたい。10個ほどの堰堤の横を通りすぎて、スキー場脇の車道へ。これを歩いて、駐車場に戻る(14:00)。(単独、テント装備・・使わなかった、ロープ9mmx50m他、アイゼン・ピッケルとワカン)


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